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本当は、
こんなことまで話すつもりなんてなかったのに……。
さっき少し話していて、
自分と同じようにお嬢さんが居ると解ったからかしら?
つい、
余計なことまで話してしまった私は、
あの頃のことを思い出してしまった途端、
自分の感情をコントロールできずに、
ジワリと涙を浮かべてしまっていた。
「……あら、ヤダ……。私ったら、どうしちゃったのかしら? ダメね……。ちょっとごめんなさいね…」
「あ、いえ、良かったら、どうぞ? お使いになって下さい…」
「まぁ、ありがとう。でも、大丈夫よ? ほら、ね? もう大丈夫。涙なんてどうにでもなるわ」
でも、
あんまり泣いてしまったら、
彼女にも迷惑を掛けてしまうことになる。
もう、
おおよそのことは話してあるのだし、
今日で終えることができるはずだし、
シングルマザーであるライターの彼女を、
幼く可愛いお嬢さんの元へ早く返してあげたいじゃない?
私は、
なんとか涙を振り払うと、
私にハンカチを差し出して、
心配そうな瞳を向けている彼女に、
精一杯の笑顔を浮かべて微笑んで見せた。
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