四、小さくない嘘に泳ぐ金魚。

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Side:麗一狼 店の開店準備も終わり、のんびりと玄関を掃きながら青葉ちゃん達が仕事に来るのを待つのみの朝。 今日の餌は、銀座にオープンしたばかりの日本初上陸のカフェのフォンデショコラに、蜂蜜のクッキー。 人肌に温めて溶けたチョコを、私と共に召し上がれ。 って、私が食べたいんだけどね。 「うふふふ。わたしったら」 「そろそろ頃合いじゃないかな」 帯ちゃんを膝に置いて撫で撫でしながら、名取の叔父さんが携帯を弄っている。 「何よ。独り言?」 「違いますよー。君のその嘘の怪我です。もうそろそろ治ったふりしたほうが良いですよ。心配している青葉君が可哀想です」 「そうねえ。私も嘘に良心が痛むもの」 スキップしても全く痛みが無いこの足の包帯とも名残惜しいけどおさらばしなければ。 「それにしても、嘘かお菓子でしか気を引けないって可哀想だよね」 「……うるさいわね。ノンケにはこうするしかないのよ」
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