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それは目を細めてしばらく太陽を見上げていた。
赤黒い全身の鱗を開いてバシーン、バシーンと威嚇音を数回たてると、
喜びを全身で表すかのように咆哮した。
微笑ましいなんてものじゃない。
全身の毛が逆立つような
得体の知れない恐怖を感じた。
そして思った。
もしかしたら壁に囲まれたこの城塞は、
こいつを入れておくための檻だったのでは……?
人の暮らした痕跡がないのは未完成だったからでなく、
元々人が暮らすための都市ではなかったからなのでは……?
次の瞬間、
その暗色の身体は文字通り霧のように霧散していた。
私には消えたのでなく、
大空に飛び去ったように感じられた。
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