2.長葱の味噌汁

2/15
33人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
 せっかく新しいフライパンを買ったのに、今回は使わないという、若干の不条理を味わうわたし。  今回カネフミくんはわたしから “合宿なので一度に複数人分の料理を作らなければならない” と聞いて、練習の題材に味噌汁を選んだのだった。 ― ― ― ― 「実はわ・た・し、既に作ってあるの。 飲んでみてくださる?」  わたしはカネフミくんをテーブルの席に着かせ、目の前にお椀を一つ置いた。 「お前が予習するなんて珍しいな……。 でもこれ、何も入ってないぞ?」  空のお椀を出されたカネフミくんは不安そうにわたしの方を見た。  そこでわたしはおもむろに懐からシェイカーを取り出すと、そこから味噌汁をお椀に注いだ。 「どうぞ召し上が――」 パッーンンッ!!  今日も素晴らしくハリのあるハリセンの音色がこだまする。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!