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さりげなくポインセチアの花が鏡台の上に飾られ、上質なタオルとバスローブが置いてある。
いつも仁は総身彫りの躰を惜しげもなく晒して、タオル一枚でうろつくし、遊馬も意識しないようにとタオルのまま早々に部屋に引っ込んでいた。
「うげえ、なんかエッロ」
ひとり言をいうのは緊張しているせいかもしれない。なんとなく普段と違う気がして、頭を傾げてしまう。豪奢なバスルームで躰を洗い、ジャグジーで遊んでから出てくると、仁は電話中のようだった。
バスローブを身に着けたのはいいが、小柄なせいか中途半端な丈に女かと突っ込みをいれてみる。テーブルに残してあったカクテルの瓶は仁が残りを飲んだらしく空になっていた。
「ああ、わかってるよ。いずれやろうと思ってたんだよ、説教たれんな」
相手は忍のようなのは話し方から推察できた。仁のほうが師匠であるのに、なんとなく忍のほうが強く感じる。
「いちいち電話してきやがって」
電話を切った仁が見えない忍に悪態をついている。おかしくなってほくそ笑むと、また冷蔵庫からカクテルを取り出した。
「おいアズ、お前いくつになった」
「はあ? ひっど。十九だよ」
「そうか、俺は四十二だ」
「知ってるよ! 先月誕生日だったじゃん」
訳わかんねえと言うと、ふた回りだのなんだのと悪態をつきながら風呂へと歩く。交代で風呂にいくこと自体がはじめる前のカップルのようで居たたまれない。
仁のいないうちにとベッドルームへ行くと、そこにもテレビが壁に設置してあって、窓際にはマッサージつきのソファとオットマンまで備えつけられていた。
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