280人が本棚に入れています
本棚に追加
仁はベッドヘッドに背中を預けて、無造作に置かれた煙草に、ジッポの火を点すと、優雅に紫煙を吐き出していた。
事後の一服とは、男ならわからないでもないが、余裕すぎて腹が立つ。
そうして色気をダダ漏れさせる男を気だるく眺めると、口に咥えていた煙草を遊馬の唇に一服とさし込んでくる。すうっと肺にいれるとすぐ放されて、細く長い煙を吐いた。
「アズ、あきらめな」
何をと聞かないまでも、わかる。悪い男に惚れて、惚れられたのだから、ひと波乱もふた波乱もあるだろう。
「僕、早まった感じ?」
そういうと眉をひそめて、大丈夫だと言いながら、髪をわしゃわしゃと乱された。
やがて仁が煙草を揉み消して、アズの横に潜り込んでくる。
そして朝がくるまで、その逞しく鮮やかな腕に抱かれて眠った。
END
最初のコメントを投稿しよう!