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それから、一時間もしない内に死体処理サービスセンターから人がやってきた。出だし帽で目元を隠した無愛想な男であったが、贅沢は言っていられなかった。私は周囲に気付かれない内に、彼を家に招き入れる。死体はソファーの上から一切、動かしてはいなかった。
彼はペンライトなどで死体の瞳孔を調べたりしていた。万が一、生きていた時のことを考えてのことだろう。もし、気絶しているだけの男を死体として処理したら、本当に殺人で捕まってしまう。
やがて、彼は男が本当に死んでいるのを確認したのか、背中のリュックサックから寝袋のような袋を取り出すと、それに男の死体を納める。実に手際のいい作業だ。
「これで、あとはセンターの方で処理をさせていただきます。それで、お代の方ですが」
彼が提示した代金は決して安いものではなかった。当たり前だ、死体を処理するという危ない仕事をしているのだ。脱税を繰り返している私だって、隠蔽工作には終始苦労を強いられている。私は彼に指定された通りの代金を支払う。
彼は死体をサーフボードのように運び、ワゴン車の荷台に積んだ。
「では、また何か問題がありましたら、センターをご利用ください」
彼は最後に帽子を脱いで深々と頭を下げると、車に乗り込み死体を持ち運びさった。
私はやっと、肩の荷を降ろすことが出来たので安心した。それと同時に、このサービスセンターは二度と利用したくなかった。死体が次々と出てくるような異常事態に巻き込まれたくなかったから。
家の庭に死体が転がっているという非日常的な経験からしばらく経った頃、私は知り合いのパーティーに呼ばれた。知り合いのパーティーといっても、学生時代の仲間の集まりではない。私と同じように脱税を繰り返している者達によるパーティーだ。このパーティーに支出したとされているお金も、色々な手段を踏んで脱税をする際に材料にお互い、使わせてもらうつもりでいた。
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