28人が本棚に入れています
本棚に追加
起きたばかりのスィエラは庭に散歩に出ていた。
庭には噴水や色とりどりの花があちらこちらに咲いている。
「綺麗だなー」
花たちを眺めながら奥に向かって歩いていく。
すると、庭の一角に見知った人物がベンチに座り、本を読んでいた。
近付いて声を掛ける事にする。
「ルチアさん」
名前を呼ぶとルチアさんは顔を上げ、こちらを向く。
「こんにちは」
ルチアさんの隣に座り、話を続ける。
「ここで本を読んでたの?」
「ええ、良い天気でしたから。」
ルチアさんはそう言うと、本に視線を戻す。
「うん、そうだよねぇ。良い天気だよね!ここは良い所だね!花の良い匂いもするし、眠たくなってくるなぁ……」
「……貴方は本を読まないんですか?」
本に視線を向けたまま聞いてきた。
「んー…読めるけど、大人になってからは買えるお金がなくて読まなかったなぁ……。子供の頃は絵本とか教本なら読んでたよ!」
「絵本ですか」
ルチアさんは再び顔を上げ、本から視線をこちらに向ける。
「どんなお話が好きでした?」
「んー……やっぱり童話かな!読んでるとワクワクしてくるからー!…あ、でも『赤ずきん』とか『狼と7匹の子山羊』とかいつも狼が悪者で最後は退治されちゃうのは可哀想だなって思ったよ。みんな仲良く、なんてやっぱりできないのかなー…。」
そこでずっと話を聞いていたルチアさんが口を開く。
「…スィエラさんは優しいですね。」
「??なんでー?」
「重ねてるんですよね?私たちと。」
狼と赤ずきんちゃんや子山羊たち。
死神と人形。
それを重ねて言ってるのではないかとルチアさんは考えたようだ。
スィエラはニッコリ笑って、
「どうだろうね!」
最初のコメントを投稿しよう!