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レイナールをリサに客間へと案内させ、丁度帰ってきたライとラッセから報告を受けていた。
「じゃあ当たったところは全員了承してくれたんだな」
「ああ、リョウのことを話したら一発だったよ。何人かは、直接会ってからとは言っていたけれど、真実だけを話したから大丈夫。今のところ順調だね」
「そうか、じゃあ住居の整備とかは急がなければな。ライは午後に町の整備の手配を進めてくれ。ラッセはそのまま続行だ」
ライとラッセは同時に了解と返した。
「じゃあ昼食にしよう。もう準備してくれているようだ」
買い物はいつの間にかレイラさんが済ませていた。
いつ買ったのか、と聞いたが、普通に買っただけですよと返された。
謎だった。
午後になるとニック夫妻が王都より帰ってきた。
「お帰り、お疲れ様」
「ああ、ずいぶん時間がかかってな。国王が嫌がらせのごとく、買い取り価格を下げてきてな。レイナール殿下が手を貸してくださったからなんとか……」
ニック夫妻は家を売りに出すついでに、この邸宅のいらない財産の売り払いを頼んでいた。
あまり安すぎると、当面の運営資金に影響が出る可能性があった。
だから不躾とは思ったが、買い取りの最低金額だけは伝えていた。
まさか国王側からの手が入るとは思っていなかったが。
「また殿下に助けられたか。自分がまだ力のない士族だと思い知らされるな」
「まだひと月も経ってないんだから仕方ないさ。これからの働きに期待した先行投資だ、と言われたよ」
亮はため息を吐かずにはいられなかった。
思いのほか野心家の彼女に、どれだけの借りを作っているのかと。
「まあ殿下に助けられたのは事実だし、大いに助かったのも事実だ。踏み倒す気はないけど返しきるしかないさ」
未だ軌道に乗らない領地運営に一抹の不安を覚えた。
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