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すがり付くように後ろから捕まったが、振り返り、しゃがみ、視線を合わせてはっきりと言った。
あ、これ失敗したやつ……。
医者は頬を上気させて、息づかいが荒くなった。
「……なんて男の子、言葉だけでこんな……。ふふふ、覚悟しなさい」
そこで考えるのを止めた。
どうやって帰ったかは覚えていない。
気づいた時には門の前で、変態医者がラリってた。
精神的疲労が大きすぎたために、風呂に入って飯食って直ぐに寝た。念のため、部屋に結界を十重に張った。嫌な予感がしたからだ。
リサに、ライとラッセへの伝言を頼み、意識を手放した。
眠りから覚めたとき、やはりというかなんというか、変態(医者はいなくなったんだ)が結界に張り付いていた。
「おいこら変態、俺の部屋で何してる」
「もちろん夜這いよ?」
「接続詞って分かるか?そこにもちろんは適用出来ないからな」
「なんてこと!じゃあお仕置きを!!」
「じゃあっておかしいだろ変態。そんなんじゃ条件達成出来ないぞ?」
その言葉が聞いたのか、張り付いていた結界から離れ、小声で何か呟き始めた。
いまいち聞き取れなかったが、潜入やら既成事実やら不穏な単語が聞こえたため、気絶させてリサに丸投げすることにした。
その時昨日どんな別れかたをしたか、全く考えていなかった。
「リサー、おはよう。こいつ任せた」
肩を貸して歩かせることは出来ないし、引きずるのも流石に気が引けたため、両腕で持ち上げている。
その状態でリサに声をかけることの危険性を忘れて。
「おはようございます兄さん。一旦その方は置いて、話があります。みっちりと」
振り返ったリサの、感情のこもっていない目や声に、自分のしたことの愚かさにようやく気がついた。
「わ、分かった。とりあえず部屋にーー」
「部屋に連れ込んでまた始めるんですか?昨日はお楽しみだったのに、まだ足りないんですか?」
あかん、はなしきいてくれない。
「リサ、少し落ち着いて」
「私は非常に落ち着いていますよ。昨日兄さんの部屋から、その女性の大きな声が聞こえてきましたからね。状況を冷静に把握しています」
このドM変態なんてことをっ?
「俺は昨日結界を十重にして寝たんだ!こいつはずっと結界の外にいた!だから何も起きてないんだ信じてくれ!」
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