第1話

第1章

キーイィィィィィィィィィィィィィィィィと当たりに車のスピンする音と女の悲鳴が響き渡る、その光景をただぼんやりとみている事しか出来ない、自分。
実際には動揺して身動きが出来なかっただけだったのだが。

「キャーッ」

そんな少年がハッとする、自分の右側で微かに身じろぐくぐもった声に、意識を活性化させる。

「音也ーっ、音也ーっ」

少年が自分と同じ顔で背丈も似ている少年を呼びかける、少年がキョロキョロともう一人一緒にいた少年を探す。

「大丈夫だからっ、今救急車っくるからっーっっ…理人兄さんーっりぃニイーっ」

なんでーっ、何でーっ。
３人もいたのに、何でーっ。
俺と双子弟の音也は今、身体をうずくめて、痛みをこらえてる。
音也はピアニストであり、同時にバイオリンの演奏者でもある。
今日は僕が強引に、音也の発表会の衣装を決めるために来たのに…。
理人は俺達の兄で、幼い頃からテニスの全国大会で優勝してきた、来月から叉試合だと意気込んでた…それだけじゃない剣道、柔道、弓も師範代の腕をもつ。
なのに今…弟より兄は血だらけで倒れている、その引き締まった身体はピクリとも動かない。
なんでーっ。なんでこうなのたの…。