第一章 

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◆いきなり敗走◆  ふわふわとしたいい気持ちなのに、誰かに乱暴に肩をつかまれ、肩を激しく揺すぶられた。 「目を覚ませ、起きろ!」  直後に耳元で怒鳴り声がする。  やぁよ、寝てるんだから、放っておいて……。  顔を背けた直後、また声が聞こえてくる。 「おい、しっかりしろ! セリ、起きろってば!」  私の名前が呼ばれてる……? 「むにゃ……」  つぶやくような声を漏らしたとたん、パシンと音がして頬に鋭い痛みが走る。 「痛っ」  一瞬にして目が覚めた。 「正気に戻ったか」  目の前には、ホッとしたような表情の勇飛くんの顔。  ひゃー、こんなにドアップで。しかも、私、彼に抱き起こされている!?  きゃー、どうしよう。  そう思った瞬間、頭を持ち上げてくれていた彼の腕が離れ、後頭部から地面に落ちた。ゴンと鈍い音がして、星が飛んでいるみたいに目の前がチカチカする。 「ひどい……」  痛む後頭部をさすりながら起き上がって驚いた。目の前の光景が信じられず、瞬きを繰り返す。 「大丈夫か? 正気に戻るにはもう一発ビンタが必要か?」
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