始まりの始まり

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「そうやって指をくわえているうちに、ほかの女子に取られちゃったらどうするのよ」  剣道部の勇飛くんは背が高くて、いつもキリッとクールな感じ。女子には興味ないって顔してるところが逆に人気がある。 「でも、告白なんて無理だよ……。見てるだけで精一杯」 「はーあ。そんなんじゃいつまでたっても彼氏なんてできないよ」  おっしゃる通りです。私は階段を下りて下駄箱に向かいながらため息をついた。 「野々香はいいなぁ。好きな人に好きって言えて。それでうまくいったんだもんね」  野々香は三ヵ月前に彼氏ができたばかりだ。同じクラスの涼太(りょうた)くん。すごくノリがよくて誰とでも仲良く話せて、ムードメーカーみたいなタイプ。今日だって野々香は一緒に帰るために、当番の彼が掃除を終わるまで、下駄箱のところで待つんだから。私は涼太くんが来るまでの野々香の話し相手。 「ふふ、いいでしょー。努力の結果よ」  野々香が締まりのないにやけ顔で言った。 「努力の結果、かぁ」
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