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「そ。体育祭で同じ応援団になったときにメアド聞いて、最初は用事を装ってメールをするでしょ。そのうちちょっとプライベートな話なんかもしてさ、彼の好きな食べ物とか映画とか音楽とかリサーチして。徐々に“あ、こいつと気が合うかも”って思わせておいて、最後に彼の好きなバンドのライブに誘って、一緒に盛り上がる! 完璧な計画だったわね」
ふふん、と野々香が自画自賛している。彼女の策略にまんまとはまった涼太くんを哀れに思うべきか。
そんなことを思いながら、下駄箱のそばの壁にもたれてしばらくしゃべっていると、やがて階段を駆け下りてくる足音が聞こえてきた。振り返ると、スポーツバッグを斜めがけにした涼太くんがこっちに――というより野々香に――向かって走って来る。
「ごめん、野々香、お待たせ」
彼が息を切らせながら言った。
「ううん、いいよ。世里と話してたから」
野々香の言葉に涼太くんが私を見る。
「いつも悪いな、津久野ちゃん」
「ぜんぜん。野々香を独り占めできる唯一の時間だもん」
「ははは」
涼太くんが笑って後頭部を?いた。
「じゃ、私は先に帰るねー」
いつものごとく私は一人で歩き出す。野々香と涼太くんとは電車の方向も違うから、ここでお別れ。
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