始まりの始まり

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 もちろん主人公の剣士様は勇飛くん。中世ヨーロッパのような雰囲気の背景画面だから、名前は“ユウヒ”とカタカナで入力しよう。決定ボタンにタッチすると顔選択画面になった。野々香たちの話では、ここで好きな人の写真を選択すると、その顔を元にしたアバターでキャラが作成されるらしい。  勇飛くんの写真、あったかな?  スマホの写真フォルダの中を探したけど、良さそうなのがない。  がっかりしたとき、誰かがドアから車内に飛び込んできた。顔を上げてびっくりした。だって、飛び込んできたのは勇飛くんだったから。 「津久野さん、お疲れ」 「ひ、柊くんも」  同じクラスだから声をかけてくれたんだろうけど、すごく嬉しい。  隣に座ってくれないかな、と思ったけど、勇飛くんは私がスマホをいじっているのを見て、気を遣ったのか横掛けの席の斜め前に座った。隣に座ってくれなかったのは残念だけど、この位置、絶好の写真撮影ポイントかも!  そんなことを思って見ていると、彼も鞄からスマホを取り出した。  私はさりげなくスマホを持ち上げ、発車ベルが鳴ると同時に撮影ボタンを押した。カシャッという音はベルに紛れて聞こえなかったはず。
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