【3】 出合い

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とりあえず、明日から忙しくなる。小母に早速知らせよう、小父にも。お礼をたくさん言おう。 けど。見合いを勧められたことだけは黙っているんだから。ふたりともお受けしなさいと言うに決まってる。 結婚なんて。冗談じゃない。小父さんの言う通りだわ、誰彼かまわず見合いを勧めているのではないかしら。 学籍を置くことを許してくれたのは感謝するけど、お見合いだけは御免被るわ! 勇ましく廊下を往く彼女は、ふと気付いた。男性にぶしつけな視線を送られなかったのはかなり珍しい。柊山は、信用できると思った。 だから、見合い話だけは勘弁して欲しかった。 いいわ、聞かなかったことにしよう。 彼女は明日から学び舎になる校内を、廻って歩いた。 学校の雰囲気は独特で、そして久し振りだ。 この学びの場に、学生として通える。 とりあえず、1年。 この1年で、多分、私は人生においての正念場を迎えることになる。 他人に負けるのは仕方ない。自分に負けたくない―― コツコツと足音を響かせ、校庭はどちらかしら、と足を止めた。 柊山がしつこく勧めた、将来有望だという学生がいるという。 どんな男だろう。 少し気になった、興味を惹かれた。 ちらり、遠目でもいいから、見るだけでも…… 思いついたはいいけれど、すぐに首を横に振った。 考えてもみて。大学生か院生が、いい歳した大人が、校庭へ出て何をするの。 ひとり、遊んでいるというの? ばかばかしい。そんな幼稚な人、こちらから願い下げだわ。でしょ? くるりと行く先を変えて、一番大きな建物、講堂へ向かった。
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