【3】 出合い

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それは、男が女を見て欲情するのと同じ視点だ。 あってはならない! 女性が男性の身体に時めきを感じるなど! だって私は、先の形にもなっていない結婚で痛い思いをしているではないか。 その後も男性と――何をしたの? 彼らを嫌悪すると心に決めたのは私。 二世を誓わない、誰に元にも嫁がない。 もちろん、戯れでも本気でも恋をしないと決めたじゃないの! なのに――目の前の青年に見とれるなんて! でも、目を離せないのだ! 息をつくのも忘れて、見入った彼の演技が寸断された。 水が流れるように滑らかだった動きが、不協和音を醸すように崩れた。 ――大丈夫なの? そう思ったから、つい声を出してしまった。 「あぶない!」 彼女の声に応えるように、彼は遠く飛び、砂場に着地した。 その動きはエレガントさより強さの方が勝っていた。まるでチョウゲンボウかハヤブサが、小動物に襲いかかるようだった。 二拍以上遅れて、幸子は駆け出し、声をかけた。 「あなた、怪我はない?」 万歳をするように両手を突き出した彼は、その姿勢を崩さず言い放つ。 「今の、見てた?」 凜とした、通りの良い声が響く。 太くも低くも、甲高くもない、まるでテノール歌手のような耳障りの良い男性の声だ。大人の男の声だった。 けれど、口調は、何というか、横柄で、少し幼く聞こえる。 見かけと、声のギャップに戸惑う彼女は二の句が継げない。 彼女にかまわず彼は続ける。 「大車輪から着地まで、ほぼ完璧にやってのけたよ。どこに怪我する余地があるっていうの。これだから女はイヤなんだよなあ」 ――何なの、この人! この言い方! イヤなのはあなたの方だわ。 大の大人の言い草とも思えない。 子供だ、この人、本物の子供なんだわ。じゃ、それなりの対応しなければね。 幸子はムッとして静かに言った。
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