11人が本棚に入れています
本棚に追加
「屑みたいな男ばかりではないということだ。君に必要なのは拠り所となる伴侶ではないかな」
「私は勉学を伴侶とします」口答えをするように即答した。
柊山は、はははと笑った。
「反骨精神は嫌ではないよ、むしろ好ましいくらいだ。1年」
柊山は人差し指を立てる。
「時間をやろう。1年だ。この12ヶ月の間に、君が望む地位に立つために必要な学習計画を立て、私に提出しなさい。君に関しては、秀以外認めない。当然だろう、君は高みを目指すと言った。一年間、頂点を維持できないで、今後の学究生活が過ごせるとも思えない。どうかね、できるかね」
「やります!」
柊山の言い終わるのを待たず、彼女は叫ぶように答えた。
「元気が良い学生は好きだよ」
柊山の顔に笑みが浮かんだ。
とうの昔に死んだ祖父を思わせる、柔和な笑みだった。女に学はいらないと言われ続けた家で、成績が上がると褒めてくれたのが祖父だった。
幸子は偉いな、賢いな。もっと勉強して、もっと賢くなりなさい。
祖父の励ましと褒め言葉がなくては今の私はなかった。
「がんばります」
「明日から来るように。席を用意させておく」
「ありがとうございます!」
ぺこり、頭を下げた。柊山と、その背を見晴るかした先にいる祖父に宣言するように。
「ところで」
マッチを擦って煙草に火をつけ、ふうと煙を吐きながら柊山は言った。
最初のコメントを投稿しよう!