第24話

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 また笑い声が起きる。そして速人には聞き取れない声で何か話していた後、その集団はそれぞれ徒歩だったり、車に乗り込んだりして移動していった。逸見も一台の乗用車に乗り込んで去って行く。その場には男女が一人ずつ残っていた。  二人は何か話していたが、やがてつまらなそうに宿舎に戻っていった。速人は素早く場所を移動し彼らの姿を盗み見る。入口近くのロビーで二人は何かを片付けているようだった。それが何なのか速人はすぐに気が付いた。人の体だった。正確には体だったものだ。腕だけだったり、足だけだったりとバラバラに切り離されていた。女の方が無造作に生首の髪の毛を掴みゴミ袋に入れているのを見て気分が悪くなる。  速人はそこから離れ、入口から見えない場所へと戻る。  一体、何だってんだ? さっきまでは軽い気持ちで散歩していたはずだった。ほんの少しの時間の間にナイフ男と格闘し、お次は生首やらバラバラ死体ときた。普通ならパニックになるところだが、速人はある意味、こういう場面には慣れていた。意識を切り替えなければ。そして早く茜たちと合流しなければ。速人は茜のことを思うと心臓が凍り付くような感じがしたが、ニコが一緒にいるはずだと思うことでいくらかは安心できた。  宿舎から離れようと思った時、速人は久美子のことを思い出した。確か具合が悪いとかで部屋に残っているはずだった。涼子も一緒にいるかもしれない。もしかしたらもう手遅れの可能性もある。しかし速人は見捨てることは出来ないと思った。彼女の部屋は二階にあるはずだ。二階に行くにはロビーの先の階段を登らなければならない。  くそっ、よりによってロビーを通らなきゃいけないのか。  バラバラ死体を片付けている二人を何とかしなければ辿り着けないことになる。  普通なら二人くらいは何でもないが、さっきのナイフ男の例もある。あれくらい強いヤツだった場合、まともにやりあったら勝ち目はないだろう。  だったらまともにやらなきゃいい。速人はロビーの方に近付き、入口近くから二人を盗み見た。死体はゴミ袋に入れ終わったらしく周りに飛び散った血をタオルか何かで拭いているようだった。
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