第22話

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「それじゃあ、意気地無しの八尋君の代わりにわたしが茜さんを救ってくるか」  そう言って彩菜は茜の元へ向かって行く。速人が様子を見ていると、彩菜は茜とその周りとの間に上手く入り込んだようだ。速人の方を指差しながら、茜に向かって何か話しかけているのが見えた。何を言っていることやら。  その後、速人も何人かの男女から挨拶を受けた。なぜだか、最後にはみんな握手を求めてくる。速人たちが知らないだけで会社のモットーか何かがあるのかもしれない。そんなことすら頭によぎる。  〝初対面では握手しなさい〟ってか。 「それじゃあ、みんな自己紹介は済んだか? これから昼食を取ったら後は自由時間だ。夕食は十八時からだから遅れるなよ。その後、今回の研修の内容を説明をするからそのつもりで。それまではゆっくりと部屋で寝て過ごしても構わない。それじゃあ、とりあえずは解散だ」  逸見が交流会とやらの終了を告げる。午後にいきなりの自由時間。周りから喜びの声が上がるのが聞こえる。どうやらこの研修が〝ご褒美〟だってのは本当らしい。  ホールの出口で書類が束になっており、それを一枚ずつ取るように指示があった。そこには部屋割りや風呂、宿舎の平面図などが記されていた。真ん中の五階建てになっている部分は全て宿泊するための部屋になっているようだった。横に広がる平屋の部分にホールや食堂、医務室等があり、研修室と書かれている部屋も幾つかあった。無駄に大きく作りすぎたのか、何も書かれていないスペースがたくさん存在した。  さて午後は何をして過ごそう。速人は船には慣れていたので特に疲れてもいなかった。それにこんなところに来て部屋で寝ていても仕方がない。  速人には行ってみたい場所があった。ここに来る途中でバスからずっと外を見ていた時、気になった場所があったのだ。島を散歩がてらそこに行ってみるのも悪くない。きっと面白い場所に違いないだろう。
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