第23話

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   外に出ると五月とは思えないほど暑かった。場所のせいなのか、それとも温暖化とやらのせいなのか。速人は薄いウインドブレーカーの前を開けた。これで少しは風通しがよくなる。  宿舎の外の駐車場に速人たちは集まっていた。とりあえず自由時間とのことなのでみんなで集まってみたのである。男性陣は全員そろっているが、女性は久美子と涼子がいない。久美子は具合が悪いのだろう。きっと涼子は付き添ってるに違いないと速人は思った。     すると、見覚えのない男が近付いてきた。手には一眼レフのカメラ。男が言うには研修の記録のために写真を撮らせて欲しいらしい。周りを見渡すと、同じようにカメラを持っている人間が何人かいて、あちこちで各グループの写真を撮っていた。 「まあ、記念写真みたいなものだよ。君らにも後で配るからさ」    男はそう言うと、みんなを横一列に並ばせ写真を撮った。軽く挨拶を交わし、別のグループに近付いていく。おそらく他の研修所から来たのだろう。写真係とはご苦労なことだ。  自由時間をどうして過ごすかについては、ある考えが彼にはあった。バスに乗って宿舎まで来る途中に見えた大きな建物を見に行きたいと思っていたのである。  あれはきっと学校か何かに違いない。二十年ほど前に無人島になったらしいのでその頃か、それ以前に廃校になったのだろう。速人は昔からそういう場所が好きだった。廃屋、廃病院、廃工場など無残に荒れ果てた場所を探索するのが子供の頃から大好きだった。そう言う場所には必ずと言っていいほど、怪談のようなものが存在するが、速人は今まで一度も幽霊の類いには会ったことはない。一度、どこかの廃病院で呻き声とかなり大きな物音を聞いたことがあるが、何のことはない、カップルがそこを無料のラブホテルとして利用していただけだった。 「さて、自由時間だとさ。これからどうする? 綺麗な海もあるし海岸でも散歩するか? 今が夏だったらなあ。みんなの水着姿が見られるんだけど」  達也の言葉に女性陣が苦笑を浮かべる。 「俺はちょっと行ってみたいところがあるんだ。来る途中で学校みたいのがあっただろ? そこを探検してくるよ」
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