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そして両手を天に掲げる。その手に先ほどの火の玉とは比べ物にならない炎が上がった。ぐるぐると円を描いて火は勢いよく立ち上っていく。
イーグルの表情に焦りが浮かんだ。
「やべっ……!」
コントロールできていないのだ。火はどんどん大きくなる。
ここが限界か、とアルトが腕を動かしかけた。
その時――
ドンッ!!
鉄砲水のような雨が降り注いだ。イーグルの真上に。
その雨は一瞬で止む。全身ずぶ濡れになったイーグルが、そこには倒れていた。
「いって……」
「わぁぁイーグル!!」
あれだけの勢いの雨を浴びたのだ。衝撃は凄まじいものだっただろう。イーグルはそのまま意識を失った。
*
「あぁ、気付きました?」
レインが覗き込んでくる。逆光でその表情はよく見えない。手だけがしっかりと握られていた。
そこにアルトが入ってきた。
「あぁ起きましたか。具合はどうです?」
「……なんか、全身がいてぇ」
「ごめんなさい……」
レインが小さくなった。アルトは軽く息をつく。
「あれだけの雨を浴びれば当然ですね。まぁ私が少しは勢いを弱めましたが」
言いながらアルトはイーグルの包帯を変える。イーグルはその様子をじっと見つめていた。
「あぁ、レインの雨にやられたのか」
その呟きにレインはびくっと縮こまる。
「ごめんなさい……」
「レインさんが謝ることありませんよ。防げなかったイーグルも悪いんですから」
巻き終わったアルトはイーグルの腕をぺしっと叩いた。
「いって!」
「まったく、今までの修行はなんだったんですか。これからはもっと厳しくしないといけませんね」
イーグルはひくっと顔を引きつらせた。
「まじかよ……」
アルトはレインに向き直った。
「レインさんもです!」
「はいっ!」
レインはびしっと姿勢を正した。イーグルだけがわけも分からず首を傾げた。
「なんでレイン?」
アルトははぁーっと深い溜め息をつく。
「レインさんも倒れたからですよ」
「は!?」
「幸い意識までは失いませんでしたが。イーグルと違って」
イーグルはぐっと押し黙った。
「力の使いすぎでしょう。貧血みたいなものですね」
イーグルは難しい顔をしている。
「それにしてもレインだよ!」
「は!?」
突然話を振られてレインは素っ頓狂な声を上げた。
「なんでそんな無茶すんの!」
「なっ! イーグルには言われたくない! 倒れたくせに!」
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