親と過去

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『分かったよ。すみませんって。でも、そうだな。もし登れなかった時のために俺がいいこと教えてやる』 『いいこと?』 『おう。あそこにさ、ちょー広い砂場があっからまずそこに立体的に、そのジャングルジムを書くんだよ。ちゃんと大きくな』 『そんで?』 『その絵の天辺に立ちましていい感じの角度から写真を撮ります』 『はい。おつぎは?』 『その写真を見て驚きます』 『・・・はぁ・・・』 『以上です。まぁそれができたらそれはそれですげぇわな』 『じゃあどっちもやったるっ!!』 『はいはい。せいぜい頑張れや。あーたっのしみー。ちょー楽しみ』 『こころがこもってねぇんだよっ!!』 『こもってるこもってるー』 『うそつけっ!!』  おとさんの肩車に乗せられて言い争いの耐えない俺達におかさんが仲裁に入ってくれて。  そんなことしながら帰った帰り道。  その日は夕日がとっても綺麗だった。 「大丈夫大丈夫」  その子は中々泣き止まなくて父親が抱っこしたまま背中をさすってなだめていた。  父親にしがみついて泣いている女の子。  大声で、泣いている女の子。  泣き方は似ても似つかないのにそれでもなぜか、その子の姿に幼い彼女が重なった。 ・・・髪の長さが似てるから?  確かに髪は長かった。  今もだけどあの頃の律の髪の長さにそっくりだ。  さらさらと艶のいい黒も、似ていた。 「ほら、フルーツジュース、飲もうか」  母親が肩にかけていた可愛らしいキャラクターの鞄の中から紙パックのジュースを取り出しストローをさしてその子にそれを手渡した。 「おいしい?」 「うんっ!!」  その瞬間、そこだけ華やかな色をもった。  回りは色をなくしても、そこだけが、色をもった。  強く強く光輝いて見えて。  どうしようもなく、涙が溢れた。  次から次へと、涙が溢れた。  それは君が、似ていたから。  あの時、始めて話したあの時に始めて笑ってくれたあの笑顔に・・・似ていたから。 ・・・律、律・・・律・・・。  心の中で繰り返したその名前は届くことはなくても。  君が、そうじゃないことな分かっていても。  それでも手を伸ばしてしまいそうになる。  律、と呼んで抱き締めたくなる。 「じゃあ、帰ろうか」 「やだっ、まだあそぶー」
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