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side 康介
俺が産まれて、17回目の春が終わろうとしていた。
時は流れ、季節は巡り時代は絶えず移り変わる。
それでも変わらないものが、ここには一つ今でも俺を迎えてくれた。
「・・・久し振り」
相変わらず、誰もいないこの場所に懐かしさ半分、寂しさ半分で踏み込んだ。
入ってすぐのシーソーのあの晴れた日の空みたいに鮮やかな青はペンキが剥がれかかっていたけれど、鉄を見え隠れされるその青はやっぱり今日の空を思わせた。
それから少し奥に進んで幼稚園にあったそれよりはるかに大きな緑色したジャングルジム。幼稚園にあるのしか登ったことがなかったからそれを見たら無茶をしてでも登ってみたくて登ったら、降りられなくなって親父に迷惑かけたっけ。
その隣にはゾウを形作ってある滑り台。鼻の部分が台になっている。滑り台はそんなに遊ばなかった気がする。幼稚園内の遊具でもそんなに人気が無かったから俺もその波に流されていたんだろう。
その先にあるのは大きな砂場。あそこの蛇口から水をはこんで泥々にして遊んだっけ。服が汚れるからやめてって、母さんに散々しかられた。
三段階の鉄棒は昔とっくに錆びてた気がする。色も剥げててそんな鉄棒の一番低いとこで一生懸命逆上がりの練習したな。
真ん中の柱がキリンになってるブランコはよく乗った。風が心地良かったから。鳥になれたような気になれたから。好きだった。
座ってこぐより断然立ち漕ぎ派。親父も母さんも落ちるんじゃないかってハラハラしてた。
でも、怒っても迷惑かけてもハラハラさせても、どんなときでも笑ってたっけ。笑って、見ててくれたっけ。
川前公園。
ここは春が来ようと夏が来ようと、いくら季節が変わろうと花が咲いてる訳じゃない。変わることと言えば木の葉の色と木の葉が枯れ落ちること。雪が降れば一面が真っ白に包まれることくらい。
あとはそうだな。
蛇口から出る水の温度。
後は何も変わらない。
人がいないのも当たり前。
年中静かなこの公園は、例え大きな公園にあるような特別な遊具はなくっても。代わり映えなんてしなくても、それでも俺にとっては家と同じくらい大切な場所。
親父と母さんが俺を連れて始めて出かけた場所。
親父と母さんとの思い出の場所。
・・・君と、始めて会った場所。
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