0人が本棚に入れています
本棚に追加
今日も、いない。
ここへ来たっているはずないのに。
探してしまう。
律の姿を、探してしまう。
もしかしたらあの時律を苦しめていた悲しみは今も君を苦しめてるのかもしれない。
あれからずっと泣いてたのかもしれない。
今もまだ、泣いてる?
律。
俺さ、今ならあそこ登れるよ。
あんなの全然怖くない。
すぐに飛んでいくから。
だから教えて・・・律は何から立ち上がれずにいるの・・・?
「こうちゃん」
「・・・か、あさん・・・」
慌てて涙を引っ込めたけど、ばれたかな。
上手に隠しきれたかな。
自信ないや。
「やっぱここにいた。こうちゃんは相変わらずね。何かあるとここに来る。嬉しいときも、悲しいときも。・・・そうだった。母さんがお使い頼んだのにこうちゃん、ちゃんとしなかったから怒っちゃった日も『家出するっ!!』とか言ってここに来てたよね。結局母さんが迎えに来たのよね」
「・・・うん、そうだったね」
俺が律と始めて会った日。
「母さん、あれさ。あんな怒んなくても良かったと思うんだよね」
やっぱり、誰もいない静かな公園。
昔はもっとぼろっちかったけどきれいになってる木製のベンチ。
昔と比べて新しいのは、ここくらい。
「あら。そう?だけどあれはけっこうあなたが悪いわよー?」
冗談半分の軽いのりで。
きっと、母さんなりに俺を励まそうとしてくれてるんだろう。
それなら別に、その日以外の話にしたらいいのに。と言いたいところだけど母さんは俺と律のことを知らないから仕方ない。
仕方ないから、話に乗っかった。
その方が幾分かは楽だったから。
ここに一人で座っていたらどうも律のことばかり考えてしまう。
ただ何も考えたくなくて、ここに来たのに。
「そだっけ」
「そうよー。あの時なに頼んだか覚えてる?」
「・・・なんだっけ」
わりと本気で忘れていた。
どうして母さんと言い争ったのかも、お使いのことも。
そのあと公園であったことは賢明に今でも思い出せるのに。
変だよね。
「母さんあなたにカレー作るから玉ねぎと人参とジャガイモをって頼んだの。ルーとお肉はお家にあるからって」
最初のコメントを投稿しよう!