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「・・・うん。・・・でも母さんそれ慰めてんのかけなしてんのか分かんない」
「あははっ、それもそうだねっ」
母さんが笑ってくれたから、俺も安心した。
平気なふりしてるけど、母さんだって泣いていたのを俺は知ってるから。
だって母さんにとったら律は自分の娘みたいなもんなんだもんな。
そんなの、悲しくないはずがない。
「・・・なぁ、母さん。律の親、まだこねぇの?」
母さんでさえこうなのに。
ほんとの親は一体なにをやってんだよ。
はっきり言って苛立ちさえも覚える。
「・・・そうね。それは、難しいかもしれないね」
それはどこか諦めているようにも聞こえたけれどそれでもどこかで願ってる。
きっとずっと、願ってる。
「母さん知り合いなんだろ?・・・なら・・・」
「分かってる。母さんもやれるだけのことはするつもりだから」
「・・・なぁ、俺が引き連れて来ちゃ、だめ?こんなに言ってもだめならもう実力行使しかないじゃん」
「だめよ。だめだめ」
「・・・そこはふざけるとこじゃないから」
「・・・はい?」
「あ、ごめん。母さんあんましテレビ見ないもんな。俺の勘違いだった。・・・でも、なんでだめなんだよ」
「・・・んー・・・それはきっと、りっちゃん自身が望まないからよ。この話、担任の先生にもしたんだけれどね。りっちゃんの家庭は少し複雑なのよ。詳しいことはりっちゃんのプライバシーに関わることだから私からは言えないけどね。・・・そもそもりっちゃんの知らないことも知ってるかもしれない。・・・だから、それは止めよう。・・・止めようね」
母さんのこんな深刻そうな顔、始めて見たかもしれない。
そんな顔されたら・・・ね・・・。
「・・・分かった、よ・・・」
「・・・よっしっ!!今日のお昼はハヤシライス!!」
「おっ、出たな。母さんの数少ない得意料理」
「失敬な。昔よりはるかに料理の腕は上がっておりますぞー」
「どうだかなー」
「ようし分かった。そこまで言うならお昼は派手にいこうでないのっ!何でも作ってあげましょうっ!・・・何でも・・・作って、あげるから。お家に、帰ろう。ね」
差し伸べられた手はさすがに恥ずかしくて戸惑ったけどそっと、握り返した。
それはいつかの帰りのように。
「・・・おぅ・・・っ」
今度は律、君の番。
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