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――耳に残るようなサイレンの音がする。
耳に残るような甲高い音が、学校付近に響き渡る。
僕はただ、膝を折って呆然と救急車の到着を待つ。
その音は近くにあるようで、まだ目の前にやってこない。
遅い……遅すぎる。
目の前に横たわる少女は涙を流しながら呻き声をあげている。
血まみれの左足を抑えながら、ただ痛みに耐えている。
「先……ぱい……」
苦しみに苛まれているにも関わらず、彼女は僕を呼ぶ。
「今、救急車が来るからっ! もう少し、もう少し辛抱してくれっ!」
僕は彼女の足に自分の制服をあて、助けが来るまでの間止血をする。
血が……止まらない。
早く、早く助けに来てくれ。
このままでは……彼女は……
「俺のせいだ……」
涙に濡れた少女の顔に、頬を伝う一筋の涙が落ちる。
後悔に胸を締め付けられる。
俺が……彼女に放課後遅くまで付き合ってもらわなかったら……
彼女の疲れに目を瞑らなかったら……
彼女の隣に僕が付いていれば……
だがすべてが遅い。
彼女は現に苦しみに悶えている。
僕が……僕のせいで……
ピーポーピーポーと甲高い音を鳴らす白い車体が僕の眼前を照らす。
安堵の息が心なしに漏れる。
「西条っ!! 救急車が来たから……あともう少しの辛抱だからなっ!!」
やがて一台の車が僕たちのもとに止まる。
後輩である彼女は担架に運ばれ、僕は同乗する。
なにごともなく助かってくれ。
祈りながら僕は少女の細い手を握る。
少女の呻き声は変わらずだ。
「西条……西条っ!!」
せめて声だけでも届けば……
彼女の名前をひたすら呼び続ける。
しかし西條は苦悶の色を示すばかりだ。
狭い室内で僕はただ祈る。
……ただ、祈り続ける。
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