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――真っ白な病室。
日曜日、時計は昼の12時を回ろうとしている。
病院の個室には、ギャッチアップした小柄な女の子とその先輩である僕だけがいる。
少女はベッドに肩を預けながら笑い話のように言った。
「もう先輩、大丈夫ですってば!」
「……うん」
西条桃花(さいじょう ももか)は屈託のない笑みで笑うが、その左足には包帯が巻かれ固定されている。
しかし、つい先ほど聞かされた話によると、その足は二度と動かすことができないそうだ。
つまりそれは、若干16歳にして一生杖を手放すことができない身体となったということである。
「それより先輩、部活は大丈夫なんですか? 今井京也(いまい きょうや)はうちのテニス部の期待のエースなんですから、マネージャーの私ばかりに時間をかけなくても……」
「いいんだ。こうしたいんだ。今回の件は僕にも責任がある。入院している期間ぐらいはお見舞いに来たい」
西条は今でこそ笑顔を向けてくれるが、心の奥底ではこの先の不安でいっぱいだと思うから。
せめて支えになりたい。
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