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「迷惑だったか?」
「いえ、嬉しいですけど、でも……」
いつもは後ろでひとつにまとめられていた長い髪が、首が傾くにつれてだらりと流れる。
困ったような、笑っているような、いろんな想いを混ぜ合わせた複雑な表情。
しばらく間が空く。
そして再び目が合うと、西條は苦笑い気味に言った。
「えっと、約束してください。私のもとに来て下さるのはとても嬉しいですが、部活も大切にしてください。私なんかのために疎かにされては困りますから」
「……わかった」
「あと、部活をしてるときはテニスに集中してください。先輩が責任を持つ気持ちはわかりますけど、あれは事故だったんです。先輩が……先輩だけが気に病む必要はないんですから」
「わかったよ」
こちらの心は見透かされているようだ。
西条はとても優秀なマネージャーだった。
一年生にして部員ひとりひとりのメンタルまでも管理でき、気配りもできる。
僕も部活内の成績が落ち込んでいたとき、時間を削ってまでトレーニングメニューを考案してくれたこともあった。
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