病室のマネージャー

4/12
前へ
/72ページ
次へ
「迷惑だったか?」 「いえ、嬉しいですけど、でも……」  いつもは後ろでひとつにまとめられていた長い髪が、首が傾くにつれてだらりと流れる。  困ったような、笑っているような、いろんな想いを混ぜ合わせた複雑な表情。  しばらく間が空く。  そして再び目が合うと、西條は苦笑い気味に言った。 「えっと、約束してください。私のもとに来て下さるのはとても嬉しいですが、部活も大切にしてください。私なんかのために疎かにされては困りますから」 「……わかった」 「あと、部活をしてるときはテニスに集中してください。先輩が責任を持つ気持ちはわかりますけど、あれは事故だったんです。先輩が……先輩だけが気に病む必要はないんですから」 「わかったよ」  こちらの心は見透かされているようだ。  西条はとても優秀なマネージャーだった。  一年生にして部員ひとりひとりのメンタルまでも管理でき、気配りもできる。  僕も部活内の成績が落ち込んでいたとき、時間を削ってまでトレーニングメニューを考案してくれたこともあった。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加