病室のマネージャー

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 ――急ブレーキの音が校舎の中に響いた。  続いて、鈍く、重いものが弾き飛ばされたような音。  職員室でテニス部の顧問と今後の部活内の方針について話し合っているところであった。  音の発生源は決して遠くない。  何事かと、半ば興味本位で僕の足は動いていた。  校舎を出ると、1台の車が止まっている。  そしてその下には……オイルのようなものが零れていた。  そのまま近づくと、車は急にエンジンがかかりタイヤを回し始める。  ……グシャリ。  なにかが折れ、引きちぎれるような不快な音を残して、車は走り去っていく。  校門前に車が一台……不審者か?  最初はそう疑った。  だが、車の立ち去った後、僕はすぐにその意味を知ることになる。  薄闇の中、道路に残されていたのは、人の姿。  体格は細く、髪も長いことから女の子であることはすぐに分かった。  その子の左足はあり得ない方向にひしゃげていて、その子が着ていたものには覚えがあった。  今時着るやつなんぞいないだろうと思える薄汚れた緑のジャージ。  目を見張る。 「さいじょおおおぉぉぉ!!」  僕は駆け出し、彼女の傍まで駆け寄った。  脚部を中心に血だまりができている。 「西条、しっかりしろ。しっかりしろっ!!」  中学校で習った止血の方法、つかうことなんてないだろうと思っていたその知識を思い出しながら、僕は来ていた制服やワイシャツの生地を使って足に巻いていく。  声に反応したのか、うっすらと開いた瞼から意識の遠のいた目が覗く。 「今井……先輩……」  すぐに携帯電話で救急車を手配した。  けれどもその左足は……骨や肉まで裂けてしまっている様子のその足からは、止血の処置をしてもとめどなく血が流れていた。
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