病室のマネージャー

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 ――病院のベッドで西条は一口大のチョコレートを口にする。  カカオ95%という真っ黒な、甘さなんて微塵にも感じさせないようなそれを、笑みを浮かべてかじる。 「んっふーっ、苦いっ!」 「そりゃそうだろ」 「うん。けど、これを食べたあと甘い飲み物を飲むとすっごいおいしいんです! おすすめはカフェオレです!!」 「……買ってこようか?」 「あ、いえっ、そのっ、そのつもりじゃ……」  手をバタバタと振って、西条は手元のペットボトルのお茶を飲む。  んくっ、んくっ、と一気飲みでもしかねない勢いで。  当然むせこんでしまう。 「んっ?! ぐほっ、ケホっ!! む、むせましたっ」 「そんな急いで飲むからだ。大丈夫か?」 「あ、はい。えへへ、ちょっとばかやってしまいましたね……」  後ろ頭をかいて、空笑いをする。  けど、今度チョコを買うときはカフェオレも買ってくることにしよう。  そうすれば、もうちょっと彼女も素直に笑ってくれると思うから。
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