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大して度が入っていない眼鏡を少し下げて、教師の俺ならば決してしないニヤリとした笑を向けると、佐伯は負けじと生意気に微笑んだ。
「なぁんだ。そっちが本物かぁ。」
小さな声で呟くと、ぷはっ、と吹き出して、
「断然そっちの方がいいっすよ。」
と、どれくらいぶりか分からない素直な笑顔を見せてくれた。
「そういう訳にはいきません。教師ですから。」
眼鏡を戻して一瞬だけ舌を出すと、佐伯は白い歯を見せて笑う。
「もう、そんな風には見れないですけど。」
笑いながら俺の前を横切って部員達の元へと向かう彼の背中を眺めながら、素を見せてしまった事を少しだけ後悔した。
佐伯に男としての俺を見せた事で、今まで密封されていた心の蓋がズレてしまったから。
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