第11章

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パンッ! 「ひゃ!」 目の前で先生の両手が音を立て、私は肩をすくめてしまった。 「ごめん、驚かせてしまって。蚊が。」 手のひらを開くと、さっきから私を狙っていた蚊らしきものが、どうやら天に召されて逝ったようだった。 「血、出てないんで刺されてませんよ。」 「ありがとう。……や、それはいいんだけど…」 違うでしょ先生。 私はそんなことが気になってるわけじゃないんだよ。 何度も拒絶されているせいか、自分からはなかなか本題に入れないんだ。 いつまでも黙って座っているわけにもいかないっていうのに。 そっと漏らした溜め息に、 「すみません。」 先生の方がいち早く反応した。
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