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黒いゴシック・ロリータ・ドレス
艶やかな黒髪。吸い込まれそうな黒い瞳。
病的に白い、白い肌。
モノクロのコントラスト。
古城の主、シュタインマルクの怪物と呼ばれた――――
"吸血姫"カミーラは、「ふぁ…」とあくびをして、起き出した。
太陽は真上。影を真下に落とす、正午。
古い木製の棺から、いつも裸の足を、ぺたり、と地面に落とす。
室内は、甘くて濃いチョコレートの香りがする。
「シュタインマルクの怪物は、おまえか?」
英雄ファストゥムは、眼前、20歳ほどの女性に"見える"ものに聖剣を向ける。
数々の伝説を持つ救国の英雄は、"人の姿をしたもの"を"いくつも"排除してきた故―――
―――"女性の姿"のカミラを見ても、微塵も逡巡はしなかった。
「シュタインマルクの怪物?何それ。」
と、カミラは無表情で言った。
「あなた、ばかね。"怪物"って呼ばれている存在が、どうして自分がなんて呼ばれてるか知ってるのよ。」
ファストゥムが、左手で、他の騎士に"合図"を送る。
「ああ、まったくその通りだ。して、"おまえ"は何者なのだ?」
33名の騎士達が、カミラに剣を向け、周りを囲んだ。
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