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"くぎ"の先端が、隆々とした、
英雄の右足 "ふともも"に
ぷちっ、と。
日に焼けた皮膚を簡単に破き、穴が開く。
うっすら筋肉をおおう、"皮下脂肪"が無抵抗に押しのけられて。もっこりと盛り上がる。
赤身の筋肉が、反射的にキュッとしまる。異物の侵入を拒む。
ぐりり、と"くぎ"を、ひねった。力を込めて。
ぷちちち、"くぎ"が沈んで、沈んで、止まる。骨で。
「!。・・ッッッ!」ファストゥムは声こそ上げないが、ひと呼吸、肩で息をした。
「・・・これは、あなたの"嘘"の代償です。」
何時からか、眼を見開いていた―――
ファストゥムと視線が交わる。
「内容によっては、ここでは"嘘"をつくだけで、大罪になります。」
囚徒の―――所作や言動は、すべてあの、『水晶球』に記録される。
思い出したように、"くぎ"のまわりに、血がにじんで、流れる。
英雄は―――
「焼かれて、死ね。」
呪いを、吐き捨てる。
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