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王国繁栄の、象徴。 英雄ファストゥム。
あまたの戦場を駆け抜けた、その脚に―――
背信咎人の、象徴。 拷問の傷跡。
" くぎ "ほど太い、”鉄針”が生えている。
皮膚に、脂肪に、筋肉に、包み込まれた" くぎ "。
私は、ひと息で、なるたけ真直ぐに、"くぎ"を引きぬっ・・・く!
強い抵抗。
ファストゥムは、「く・・・ぅ。」顔を、左半分を、ゆがめる。
ぱたた、と " くぎ " の先端から、血。床を汚す。
―――ここは、道理を通す。
「あなたは。何を、隠しているのですか。」
英雄は、聞こえなかった、という風に、反応をしなかった。
「では。もう一度。」と、"くぎ"を振り上げる―――
振りおろす、時、背後で。
「うるっさいわね!誰だと思って!いいから、どきなさい!」
ばんっ、と開く木製の扉、無機質な部屋の、光量が少し増す。
光源、牢の出入り口には―――
こちらに、心底申し訳無さそうな視線を送る、人払いの騎士と
―――よほどの急ぎ足で来たのか、肩を上下させる、王女メアリーの姿があった。
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