序章

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††† 男は――― 稠密で、重い、錆びた鉄と湿った石の臭い。 目を覚ます。立ったまま寝ていたようだ。 闇。暗闇の中。 目を開けている感覚はあるが、暗黒。視力が無くなっているのかと不安になる。 音のしない世界。静寂が耳に痛い。 自分が、手も足も大きく開かされている事に気が付く。あまりの無防備。 手、足、ほんの少しだけ動く。 右腕に力を入れると、ガチャガチャと金属が擦れる音が聞こえて。 耳は正常に聞こえる。 反対の腕も、足も同じ。鎖錠で"固定"されていた。 はあ。ため息をつく。いつもより、自分の吐息が大きな音で聞こえる。 直感で、自分が"小さな部屋"に居るのだとわかった。 感覚が研ぎ澄まされるよう。他に人の気配はしない。
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