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どれくらいの時間が流れたか。感覚は無いが、腹の減り具合で時間を"読む"。
眼は開いたままの感覚。どれだけ経っても、少しの光も拾えなかった。
―――遠くから足音が聞こえてくるような"気が"して。
闇、暗闇に、白い光が差す
いやに重そうな声で鳴く、扉が開いた。
男が、無言で部屋に入って来る。
逆光で"かげ"になって、顔は見えない。シルエットで、男だと判った。
「―――よく、眠れましたか。」
声で、やはり男だと確信する。丁寧な話し方だ。
男の形をしたシルエットが、こちらに近付いてくる。
石の床と、男の靴が音を鳴らす。
こんな無防備な状態で、警戒しても仕方がないのだが、それでも体に力が入る。
何かが擦れる音がして、マッチに火が付く。
男の形をしたシルエットは、若い男だった。
「私は、エスデスといいます。あなたを拷問しに来ました。」
"エス"でいいですよ。と若い男は優しく言って、ランプに灯りを入れた。
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