竜殺しの英雄ファストゥム

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DD1152年。灼熱の夏。 地上の熱も届かない地下。 ばかみたいに快適な温度の。拷問牢。 部屋の隅、排水の溝にこびり付く血と油の臭い。 囚徒に見せつけるよう置かれた、悪意を絵にかいたような道具達。 捕えられて、連れてこられた時点で――― 息まいたゴロツキも、知恵で武装した詐欺師も、強盗強姦を繰り返す鬼畜も。 ―――囚徒の"半数"は、心を折り、自ずから不埒を語りだす。 残りの、半分は、 無実と言い張り、誤解と嘆く者。 呪いの言葉を吐き、反骨を貫く者。 大義を主張し、自己弁護に努める者。 ―――そんな"者"、で"くくれる"事が大半だった。 裁きの神カンブンドレの庇護は、永い平和を王国に与えて――― 法は平等では無く。 奴隷には奴隷の法が、貴族には貴族の法が。 ―――王国は腐敗した。 裁判が存在しない時代。罪と罰は、自白がすべて。 拷問牢は、"自白"を支配する。
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