145人が本棚に入れています
本棚に追加
「……怖い人ですか?」
「怖い?いやとてつもなくソフトだ」
「じゃあ意地悪?」
「意地悪?ううん、むしろ逆。どちらかと言えばいじめられっ子かな」
「それじゃ――」
「どうしようもない魔性なんだよ」
うっとりと目を細め
涼介さんは言った。
「それこそね、どんないい男も彼にかかればイチコロさ。男に人生のすべてを賭けて愛させるんだ。あらゆる手を使って引きずり込む――とてもつなく澄んだ底なし沼にね」
とてつもなく澄んだ
底なし沼……?
「それも、一度に罠にかかるのが一人とは限らない」
「え?」
誰もいないのに。
涼介さんはそれらしく声をひそめた。
「平均して2人――ないし3人ぐらいはいつも沼の底にいるかな」
最初のコメントを投稿しよう!