第1章

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ダイビングにも初挑戦したんだっけ。 私は波に酔っちゃって、あろうことか陸に上がった瞬間吐いちゃったんだよね。 あの時も達也は優しく私をフォローしてくれたよね。 そして、迎えた最終日。 最後はサンセットクルーズ。 まだまだ上にあるように見える夕日だけど、あっという間に沈んでくんだろうな。 水面をキラキラに照らしてる太陽はどんどん姿を濃いオレンジへと変えていく。 デッキに上がって、私は手すりに右手を置いていた。横にいる達也。私には触れない。 沈黙が続く。 「・・・旅、終わっちゃうね。」 気まずい沈黙に耐えられなくて口を開いた私。 「・・・・・。」 やっぱり何も喋らない。 疲れてるのかな?と思う気持ちと、この旅で私何かしちゃったのかなって不安が入り混じる。 「達也?・・・」 「・・・・。」 「どうかしたの?」 「・・・・。」 「私、何かした?」 膨らんでく不安に耐えられなくて、涙声になる。 その瞬間だった。 いきなり達也が私の背後に回ったと思ったら、折れるぐらい強く強く私を抱きしめた。 そして、私の耳に囁く魔法の言葉。 「愛してる。ずっと。結婚しよう。」 あれから10年。2016年。 私達はまたここへ戻ってきた。 翌年、結婚した私達はその後、3人の子供たちにも恵まれ、平凡だけど幸せな毎日を過ごしている。 それもきっと、達也が変わらず私を愛し、家族を愛し大切にしてくれているおかげなんだと思う。 持ち前の優しさで、愛を伝えてくれてる。 なのに私ときたらどう? 子供を産むごとに母は強し!って変貌を遂げ、当初思い描いていたカワイイ奥様から、日々脱線して行っている。 それでも達也は何も言わない。 どんなに私が凹んでいても、必ず笑顔へと導いてくれる魔法使いみたいな存在。 本当に優しい!幸せ!ありがとう!! 本当にありがとう!! 口に出せばいいのに年々伝える方法を失っている。 ある日。私はバウ・リニューアルというものを知った。 結婚してる二人が、お互いに感謝を込めて再度、愛を誓い合うという制度。 私は決めた。 これしかない。 収まりきらない感謝の気持ちを伝える唯一の方法。 そして、それをここで誓う。 2度目だけど、人生最後の誓いにする。 二人で過ごす人生のキッカケになった、あの濃いオレンジの夕日のハワイで・・・。
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