第1章

2/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
その虫は、実に不思議な呪文を唱える。 似我似我似我(我に似よ)  そう唱えながら巣穴に閉じ込められた青虫は、数日の後にはその虫にそっくりの姿となって這い出してくるのである。  だからそいつはこう名づけられた……ジガバチ。  もちろん、名前の由来に関する一説でしかない。実際には毒を刺して麻痺状態にした獲物に卵を産み付けるのだ。孵った子虫は獲物を喰らって親蜂となり、巣穴から這い出す。  だが、それは呪文によって一個の虫が、分身へと変えられる様に見えなくも無かろう。  ならば俺も変わるのか? あの腰の妙に細い、黒に黄色のコントラスト美しい一匹の蜂へと……。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!