第1章

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②イスラーム経済を一枚岩のものとして捉えている  中沢はムハンマド・バーキル=サドルの『無利子銀行論』なんかを参照してるんだけど、サドルはシーア派である。  イスラームでは多数派はスンナ派なのにイスラーム経済論をサドルに代表させるのは乱暴ではないかと……。  また、いくら当時シーア派、スンナ派とわず高く評価されたとはいえ、サドルの死去から三〇年以上経つわけだ。  その間、イスラーム金融はおおきく変容を遂げている。  どんな金融手法が許容されるのかは国ごと、宗派ごと、学者ごとに見解が分かれ、多様な現実があるのに、イスラーム=利子の禁止とひとまとめにし、サドルだけを手がかりに話を進めていることはいただけない。 ③今日のイスラーム金融の実態が踏まえられてない  これがいちばん問題だ。 「資本主義とも社会主義とも異なる、「イスラーム経済」という現実が実在することを、認めることからはじめることにしよう」とか書いているんだけど、実在するイスラーム金融の手法をいっさい紹介していない。  イスラームでは、シャリア適格、利子の制約、利益損失の共有、実物取引の裏づけの要請、不確実性の忌避(投機や賭け事の禁止)を守るようなかたちでの金融手法が発展している――イスラーム銀行が存在しているという事実を無視している。
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