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瞳に灯った意志の光りが陰る。
瞠目するアヤナさんを目端に見つつ、子供たちに追いかけられるリックを見て頬を綻ばせた。
「孤児なんですよ、俺。…いや、あの学校に通わされてる中にも俺みたいな孤児は大勢います。そんで、どういう訳かアルベルトに拾われて、あれよあれよとしている内に、こんな所まで来たんです」
「そ、そんな…。孤児だなんて…。ご、ごめんなさい、私、そんなつもりじゃ…」
興味本位で聞くべき話題ではなかったと反省するアヤナさんだったが、俺の方は誰かに話しを聞いて貰いたかったのも否定できない。
昨日、リーザさんに無理やり思い出させられた過去の傷。
――自分を知る事から始める
その上で、過去の出来事はどうしても整理しておきたい自分の一部だ。
だから、誰かの目が要る。
俺がまた、変な思い込みに走らない様、冷静でいられる様に、傍で今の俺を見てくれている人が…
「別に責めてるわけじゃないです。それに、さっきの質問の答えは、”分からない”です」
「分からない?…でも、こんな所にまで来て戦い方を学びたいって言うほどでしょ?」
「…目的は、確かにあるんです。でもそれは、今すぐにどうこうって話じゃない。強いて言うなら、俺はこの世界での生き方を学びたいと願ってアイツの弟子になった」
”エレナたちが創る得る世界を見てみたい”
これは確かに目的だ。
目的であって、俺が辿りつく夢ではない。
その手助けをしたい…とは、また違う。
エレナたちとは違った視点で、この世界が変わる所を見たいのだ。
ああ、まずそこからだな。
俺の目標が無いんだ。
「アルベルトは、目的が無くても傭兵にはなれると言ってたんです。…それに甘えた結果、俺は主体性を持たないまま、周りの雰囲気に流されここまで来た……。ホント、自分が無いんですよ。自分がない上に、他人に触れられる事を忌避してる。でも自己中心にもなり切れない。なのにどこかでは他人を求めていて、俺の深くまで踏み込まれるのは嫌だとか…。支離滅裂にも程がある。日常と非日常の境目を未だに掴めてない、と…。少し考えただけでも、俺がどれだけ人としての何かが欠けている思い知らされます」
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