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一体この家は何なのだろうか。今まで疑問も抱かずにいたが……、否。疑問は常にそこにいたのに、何故か問題視もせず迂闊にもここまでやってきてしまったのだ。
床が軋む。私は歩きもしていないのだから、人影がこちらにきている事は明白で、逃げなければと思うのに動けない。
とうとう目の前まできたらしい。
きた筈なのに、暗闇に慣れた目でも存在は捉えられずに、なのに息遣いは鮮明に、そしてはっきりと聞こえてくる。
こちらを見ている。
視線を、感じる。
睨まれている。
いやだ怖い。
見るなよ。
見るな。
ゆらりと、肩に手を置かれた。
熱い。ちゃんとした人間のぬくもりで、何故そうされたのかすぐには理解らなかった。
段々と手に力がこもる。
ぎしぎしと、骨の音が聞こえてきても不思議と痛みは感じず、そしてまた、電車が線路を走るのだ。
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