第17章~地獄に憧れる少女~(春の花編)

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こうして口で云わない代わりに頭でブツブツ文句を云っている中で次の部屋へと案内された雪は、雪乃によって開けられたドアの向こう側を見て 〔……はい?〕 となった。が、それもそのハズ。何せその部屋はロッククライミング上級者それも相当なプロ用の部屋で、入ってすぐの所にある大きめなロッカーを開ければ専用手袋だの靴が一式揃えてあって使う順番に取り出しやすく納められている。そしてそこから汗を流すのが目的のミニシャワールームに行く事も出来る構造だ。 〈GAKUね。今人間みたいに歳とってて身体もバリバリ悪魔だった頃とは大分違ってるって。それでこーゆーのやって鍛えてるの〉 軽く十五畳余りもある部屋の中のロッククライミングセットにただただ釘付けになっていた男二人に雪乃からそう説明してくれたが、ちょっと前にGAKU本人から本来なかなか老いやしない悪魔でも一定期間人間が口にしているものと同じものを食べ続ければ歳を取るようになると聞かされた事しか知らなかった雪は、更に詳しい事を知っているっぽい彼女に質問した。 〔‥一定期間人間と同じ食生活をすれば老いるとアイツから前に聞いた。だがその期間がどれくらいかも他に何があるかもアイツは云わなかった。それを、お前は知っているのか?〕 雪乃は、彼の個人情報を自分が勝手に雪に話して良いものかと悩める素振りを見せたがそれはほんの数分で丁度カップラーメンが出来上がるくらい悩んだら 〈まぁ、雪ちゃんGAKUとおんなじ悪魔だし、今知っとけば将来どうするかもジックリ考えられるでしょうって事で、教えてあげる〉 とほのぼのした口調で云われ、GAKUではそこまで詳しく話してくれないかも?という所までよー…く話してくれて、多分コイツは、本来、面倒見の良いおっとり系女子だったんじゃないか?という所に初めて気がついた。
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