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とある日の夕暮れ。
この頃にしては珍しく、雨が降っていた。
天気予報でも言っていなかったため、傘を持っていなかった俺は仕方なく、古ぼけた大きな門の下で雨が上がるのを待っていた。
俺は、一人称から受ける印象とは裏腹に、どこにでもいるいじめられっ子だ。
気は小さいし、発表なんかは大の苦手。
少しでも人と話せるように、とアルバイトを始めたが、ここでもポジションは変わらず。
パシリなんて、もはや日常のワンシーンと化している。
そんなだから、こうして雨が降っていても、俺に傘を差し出してくれるような心優しい人はいない。
この門の下には、俺以外には誰もいない。
ただ、雨風にさらされたのか、所々赤い塗装がはげている大きな柱に、なぜかキリギリスが一匹とまっている。
……いくらなんでも、キリギリスに話しかけようとは思わないが。
ところでこの門、やたら古いのにも関わらず、この辺りでは一番のメインストリートへの入り口となっている。
この門から通りを見ていると、それなりに人がいることは分かる。
ただ、人は一様に傘をさしていて、この古い門の下で雨宿り、なんてことは頭にないようだ。
それもそのはず、この門は「不吉な門」として有名だから、ここを通ろうとする人さえいない。
少なくとも、この門が入り口であるにも関わらず、
別の場所に新しい入り口を作ってしまうほどには
この門は「不吉な門」として知られている。
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