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「………………」
「なんだ。今日は元気がないな」
「あ、お化けさん」
「どうした? 何かあったのか?」
「………うん」
「何があった。聞いてやる」
「あのさ、お化けさん。わたしってウザい?」
「………………? 質問の意味がわからないな」
「友達がね。一年生の時からの友達がね。私のことウザいって。叩くの」
「叩くのか」
「………うん」
「俺もお前に叩かれたことがあるな」
「………、ごめん、なさい」
「いや、責めてるんじゃない。俺は別にお前に叩かれても気にならなかった。違いはなんだ?」
「………違い?」
「ああ」
「だって、わたしのことウザいって。わたしは、お化けさんのこと、ウザいなんて言ったことないよ!」
「………」
「それ、でもわたし、泣かなかった。でも、お化けさん、どこにもいないんだもん。会いたかった。褒めて欲しかったよぅ」
「ああ、泣くな泣くな」
「だって………、だって………」
「お前は泣いているより笑っている方がいい」
「………笑って?」
「ああ」
「………………、うぇひひ」
「そうだそうだ。その調子だ」
「………うん」
「しかし、その友達とやらはなぜ叩くのだろうな。心当たりはないのか?」
「ないよっ! 急にだもん。なんで、って聞いてもやめてくれないんだもん!」
「落ち着け。お前が悪いことをしたなどと言う気はない」
「………ほんと?」
「当たり前だ。俺はこれでも長く生きている。お前がそんな人に酷い事をするような人間じゃないことくらい、わかる」
「………うぇひひひ」
「ただ、起こっている物事には必ず理由がある」
「必ず?」
「ああ。必ずだ」
「偶然とかあるじゃん」
「それは人間が勝手に作ったものだ。偶然というのは、理由が複雑すぎて説明するのが億劫な時に使われる言葉だ」
「運命は?」
「偶然を、さらに良い印象で相手に伝えたい時に使われるものだな。偶然と同じで、厳密にはそんなものはない」
「ほんとに?」
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