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とはいえ部屋に入ると、途端に落ち着かなくなった。伊織が来たらどんな顔をして迎えればいいのだろうか。
また――抱かれるのだろうか。まさか、そんなことはありえないよな……でも。
本当は疲れてもいたし、早くシャワーを浴びて眠ってしまいたかった。でもシャワーを浴びていたら待ち構えていたと思われるかもしれない。佐知夫はスーツのままベッドにダイブした。天井を眺めて少しすると呼び鈴が鳴る。ドアを開けると、自分の部屋でシャワーを済ませたのか、軽装の伊織が立っていた。
「あれ? シャワー浴びてなかったんですか?」
ドアを開けるなり、するっと中に入り込んできた伊織は、後ろから佐知夫を羽交い絞めにして、囁いた。それだけでずくんと下半身が疼く。体の向きを変えられて、唇をふさがれた。戸惑いながらも、それを待ち焦がれていたように舌を絡めてしまう。
「ん……んふ……あ」
またもベッドまで押され、そのまま押し倒されそうになる。
「シャワーを、使わせて……くれ」
伊織の肩を押して、途切れ途切れの言葉で告げると、伊織の力が少し弱まった。
「わかりました。じゃあ、俺を受け入れられるように存分に準備してきてくださいね」
あからさまな言葉に赤面していると、早く行かないとこのまま襲いますよ、と冗談に見えない真顔で伊織が言った。
「そんなこと言っても、何も持って来てないし……」
ノンケでも、一度は佐知夫を抱いたのだから、伊織だって男同士は準備や道具が必要なことはわかっているだろう。だが、佐知夫が放った精一杯の抵抗はいとも簡単に破られる。
「その心配には及びませんよ」
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