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「少しは素直になってくれたのかなぁ……ねえ、佐知夫さん。どうして欲しい?」
そんなの、わかっているくせに意地が悪い。伊織を見上げて睨みつけるが、全然迫力がないですよ、と笑われる。
「そろそろ認める気になった? 俺のことは好き?」
ふいっと顔をそむける佐知夫に、伊織はまた軽くため息をついた。
「なんでそんな意固地になるの」
佐知夫がその言葉に頷かない訳を、本当に伊織はわからないのだろうか?
伊織のことを好きだが、誰かから奪ってまで手に入れようとは思っていない。そもそも、完全なる片想いなのだ。何かを望むなど恐れ多いと思っているのは今も変わらない。
「佐知夫さん……」
手を握られ、ベッドの上にがっちりと縫い付けられる。伊織の瞳は欲情を隠さず、ボンボンショコラを摘んでまた、佐知夫の口の中に入れた。そこへ唇を寄せて、ショコラを奪い合うように舌を絡める。
官能的な味と香りが鼻から抜けてぞくりとした。ショコラの味がそうさせるのか、伊織にそんなことをされているからなのかわからない。ショコラがとっくに消えて、味がなくなってもしばらくふたりの唇は離れなかった。
「んっ……」
ローブを羽織っただけの体は、あっという間に裸へと剥かれてしまう。無意識に伊織のシャツに縋ると、ふっと微笑んだ伊織の熱い舌が首筋にあたった。ちゅっと吸い上げられて鈍い痛みが走る。
「あっ……」
「佐知夫さん、かわいい……」
耳元に響く伊織の声を聞くだけで、先走りがとぷりとこぼれた。伊織にキスをされた箇所は熱を持つ。体中が――熱い。
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